『Planetside2』など手がけたSony Online Entertainmentは、ゾンビサバイバルゲーム『H1Z1』を発売した。だがローンチ後、追加要素を購入したプレイヤーが有利になる"Pay-to-Win"デザインが採用されているとの批判が噴出し、最終的にSOE側が返金に応じる騒動に発展した。『H1Z1』は、開発途中の作品を提供するSteam早期アクセスのタイトルであるため、「返金を要求するのはお門違い」との意見もある。
期待のゾンビMMO新作、ローンチでつまづく
『H1Z1』は、『DayZ』や『Survivor Infestation』に続くMMOタイプのゾンビサバイバルアクションゲームだ。プレイヤーは1人の生存者として、ゾンビであふれかえる世界を生き抜いてゆく。他プレイヤーと協力あるいは敵対しながら、日々の食料や水を確保し、ゾンビを倒すための武器を集め、拠点を構築する。『Planetside2』や『Rust』にも似た、生産物の権利を生産者が有するOwnership(所有権)の概念が特徴である。
『H1Z1』は現地時間の1月15日昼ごろにローンチされ、この日を待ちわびたユーザーたちがゾンビのごとくサーバーに殺到したのだろう。サーバーは即座にパンクし、ローンチから翌日16日の早朝まで、ほぼログインできない状況が続いたとみられる。ローンチから十数時間、TwitterやTwitch上では、ログインできないユーザーたちの叫び声がこだました。(via Polygon)
SOEの代表であり、『H1Z1』のフロントマンでもあったJohn Smedley氏は、Twitter上でスタジオ内部の様子を逐一伝えた。ログイン障害の対応は16日の夕方まで続き、チームメンバーは眠い目をこすりながら帰宅したという。
とはいえ、ログインが満足にできない状態は、期待作のローンチでよく見られる現象だ。修正すべきバグや問題点への糾弾もフォーラムで散見されるが、同作はまだSteam早期アクセスの段階であり、フィードバックのための報告だけをすべきである。ユーザーが真に批判すべきタイミングは、これらの問題が放置されたまま月日が過ぎた時だろう。時間が過ぎても開発スタジオが問題に対処する姿勢を見せないのなら、そこは遠慮なく追求すべきである。
AirdropはPay-to-Winか
返金へと直接繋がった問題は、『H1Z1』に実装された"Airdrop"システムである。Smedley氏は、ゲーム内で弾薬や武器はショップから購入できないと何度も明言してきた。一方でこのAirdropは、追加要素を購入することで消費アイテムをゲームワールドに投下することができるシステムだ。Smedley氏の発言とAirdropの実装を矛盾と捉えたユーザー達は、怒りをあらわにした。
SOEは『H1Z1』のプロモーションに関し、明らかにメディアよりもコミュニティを重視してきた。それはゲーム公式サイトのトップページにソーシャルメディアが並んでいることからも確認できる。プレスリリースを配布するのではなく、海外フォーラムRedditへ書き込んでファンと交流し、頻繁に最新情報を映像配信で解禁してきた。そのなかでSmedley氏は、『H1Z1』では武器や弾薬、食料や水といった消費アイテムはまったく販売しないと何度も誓ってきた。単純に売りつけることは「Suck」であるとさえ言い放っている。(via Inc Gamer)
一方でSmedley氏は、Airdropに着手し、ローンチされた『H1Z1』に実装した。これはプレイヤーが20ドルか40ドルのリアルマネーを支払うことにより、ゲームワールドに物資パッケージを投下させるシステムだ。パッケージのなかには、食料や水、弾薬や武器といったアイテムがランダムで入っている。
前述の発言と矛盾するアイデアのようにも思えるが、Smedley氏が二枚舌というわけではない。この機能は、ランダムな場所へランダムなアイテムが投下されるというシステムである。投下された物資を求めてプレイヤーたちが殺到し、血なまぐさい戦いを繰りひろげるのだ。ただし投下場所はプレイヤーからある程度近くになっており、横取りされづらいものとなっている。このため、実質的にはPay-to-Winであるとの声があがったのだ。
とはいえ、消費アイテムをある意味で購入できることに変わりはない。当初はファンに納得してもらおうと説明を続けていたSemdley氏だが、のちにゲームタイトルの返金を受け付け、さらに自分のF2Pデザインに関する発言がAirdropへの配慮を欠いていたと認めた。「あの時点で、君たちに嘘をついた形になってしまったのを心の底から理解しており、謝罪する」と伝えている。
Airdropのアイデアは昨年から公表されているものであり、SOEが不意打ちのような悪意をもって導入していないことは明らかだ。だが結果として、ローンチでつまづく要因となってしまった。SOEはAirdropのランダム性などをさらに高めることを約束しており、ユーザーたちの声に応えようとしている。即座に返金を受け付けたのも、ユーザーの信頼を獲得したい彼らの心の証明と言えるだろう。早期アクセスは、ユーザーとデベロッパーが共に歩んでゆくビジネスモデルである。スタートには失敗したが、今後長い目で『H1Z1』を見守ることが必要である。